不動産投資でも起きうる黒字倒産の真実

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一般的には黒字と聞くと良い印象を持たれる方が多いと思いますが、黒字でも倒産してしまうことがあり、不動産投資は、比較的黒字倒産が起きやすい事業でもあります。

今回は損益とキャッシュフローの違いをご説明した上で、黒字倒産が起こってしまう仕組みについてお伝えしていきたいと思います。

■PLとキャッシュフローは異なる
まず、損益とキャッシュフローの違いについてですが、皆さんに分かりやすい言葉でお伝えすると以下のような説明になると考えております。

損益・・・会計上の規則に則って計算された利益/損失
キャッシュフロー・・・現預金の増減

上記説明だとイメージが湧きにくいかもしれないので、具体的な例を1つお出しします。

例えば、不動産投資で発生する物件の定期清掃費用の支払いが年に1回、合計で12万円だったとします。(定期清掃は月に2回)

この場合、キャッシュフロー計算は簡単で、年に1回の支払い日にキャッシュフローの減少として計算をします。

しかし、会計のルールでは、支払が行われていなくとも既に役務の提供がなされているサービス対価については、未払費用として計上しなければならないとされており、上記の場合、支払いが発生していなくとも、毎月未払費用として1万円の損失を計上する必要があります。

上記の損益とキャッシュフローのズレは、支払いが行われた時に解消されますが、それまではキャッシュフローは多く、損益は小さく認識されることになります。

不動産投資家はキャッシュフローが命だから、損益なんて気にせずにキャッシュフローだけ気にすれば良いのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、不動産投資はキャッシュフローが命です。キャッシュフローがプラスあれば倒産することはないです。しかし、キャッシュフローに大きな影響を及ぼす税金は損益を基に計上されます。

厳密には会計上の損益から税務上の利益/損失に調整をするのですが、損益のコントロールをできないと、必要以上に税金を支払うことなる、または、想定外の税金がかかることになるので、注意が必要です。そして、この点が黒字倒産に関係してくるのです。

■黒字決算だけど自己破産してしまう仕組み
不動産投資における自己破産はキャッシュフローのマイナスが続くと起こってしまいます。

つまり、黒字倒産とは損益上は黒字だけど、キャッシュフロー上はマイナス続きになってしまう状況の時に起きやすい事象になります。

不動産投資で黒字倒産が発生する仕組みを理解するために抑えておくべき概念は、減価償却費とローン返済の元金部分です。

減価償却費は、物件の建物が年々減価していくことに伴って発生する損益上の損失です。しかし、建物の劣化に伴って毎年キャッシュアウトが発生することはないので、実際のキャッシュアウトがなく、損益減少に伴う税金削減効果をもたらしてくれるという意味で減価償却費は不動産投資において味方だと言われています。

一方、ローン返済の元金部分は上記と逆の概念になります。
会計上、ローン返済の元金部分はあくまで借りたお金を返金しているだけであり、損失ではないという捉え方をされます。

しかし、キャッシュフロー上はキャッシュアウトです。

従って、損益上は損失として認められず、税金削減効果が全くないのに、キャッシュアウトは発生してしまうのがローン返済の元金部分であり、不動産投資においてはネガティブ要素です。

上記まとめると、以下となります。

減価償却費・・・損益上はマイナス、キャッシュフローに影響なし
ローン返済の元金部分・・・キャッシュフローはマイナス、損益に影響なし

では、不動産投資では、どういった時に黒字倒産が起こりやすいのでしょうか?
次の章で防止策も含めて、考えてみたいと思います。

■不動産投資で黒字破産を防ぐためには
不動産投資において、減価償却費が少なく、ローン返済の元金部分が多い状況とは、建物の減価償却年数が終わったけど、ローンの返済は続いている状況であることがほとんどです。

例えば、築22年超の中古木造物件を20年フルローンで購入したとします。

この場合、減価償却費については、会計ルールに基づき4年間減価償却が計上されます。そして、ローンの返済は20年となります。

購入後4年間は、ローン返済の元金部分より減価償却費がかなり大きい状況となることが多いため、損益は小さく、キャッシュフローは大きいという望ましい状況になります。

しかし、購入後4年を経過した後は、それまで計上できていた減価償却費が計上できなくなることで、支払税金が多くなり、キャッシュフローが少なくなってしまい、最悪キャッシュフローがマイナスになるということも起こり得る状況になります。

上記のような状況を防ぐための魔法のようなものはないのですが、購入時にしっかり税金も含めてプラン立てを行うということが重要だと考えています。

購入時には少なくとも、減価償却費が計上できる期間、ローン返済期間、そして、減価償却費が計上できなくなった後の支払税金を含めたキャッシュフローの試算はすることは可能です。

減価償却費が計上できなくなったとしてもキャッシュフロー上プラスで運用できるのであれば、保有し続けるということでも良いでしょうし、キャッシュフロー上マイナスになってしまうのであれば、トータルで損失になる可能性があるので購入しないという選択肢、または減価償却費が計上できなくなったタイミングで売却するという選択肢等を検討していく必要があります。

不動産売買仲介業者は、上記のような税金も含めた収支シミュレーションを出してくれないことが多いのが実態です。従って、黒字倒産を防ぐためにも、自分自身で税金も含めた収支シミュレーションを出来るようにしましょう。それが、1番の防止策だと考えています。

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